『 歳末 ! ― (4) ― 』
「 ちょっと相談があるんだが 」
その日 夕食が終わるとアルベルトが仲間たちに声をかけた。
< 仲間たち > といっても ジョーは ボランティアにでかけていたし
ジェロニモ Jr. は 植木屋で修業中につき まだ帰宅してない。
「 あら なあに。 ちょっと待ってね お茶を淹れるわ 」
「 ああ すまんね 」
「 なんの相談? あ ・・・ アレのこと? 」
ピュンマが どど〜んと臼の形を示した。
「 そうだ。 モチツキ大会 だ 」
「 準備万端OKなんだろ? ウスとキネ はしっかり確認して借り受けることに
なったし。 モチゴメ ってのをまずは炊くってことも習ったし。 」
ピュンマが結構自信あり気な顔で頷いている。
「 ああ そっちは大丈夫だ。 キネも実際に持たせてもらったし
< 搗く > 動作もレクチュアしてもらった 」
「 へ〜〜〜 すごいねえ〜〜 さすが ・・・ ( 独逸人 ) 」
ピュンマは後半、口の中で呟いた。
「 ふふん ・・・ イベントに前にはきちんとリハーサルをしなければな。 」
「 そうね。 ・・・アルベルト、舞台のプロデューサーに向いているんじゃない? 」
「 だめだよ〜〜 皆 ・・・ 逃げちゃうよ あの強面じゃ 」
「 あは そうかも〜〜〜 」
「 なんだって ??? 」
「 「 い〜え なんでもありません 」」
フランソワーズとピュンマは 大人しく口を閉じた。
「 ふん? ま〜 ロクなことじゃないだろうが ・・・ この際不問に付す。
問題が ある。 」
「 なんの。 」
「 モチツキ大会 の 会場だ。 」
「 え〜〜 ウチの庭か ・・・ それか門の前のスペースでいいんじゃないかい?
あそこ かなり広いからわらわら来てもらっても大丈夫だろ 」
「 広さは な。 問題は 道のり だ。 」
「 みちのり?? 」
「 ああ。 ― あの坂が問題だ。 」
「 坂? ウチの前の坂のことかい 」
「 そうだ。 あの坂だ。 」
「 あ。 そっか。 僕たちはなんてことなく上ってるけど
普通の、町の人々にとったらかなりキツイかもな〜〜 」
「 ワテ、よう登らへん。 帰りはいっつも車やよって ・・・ 」
「 お前さんはダイエットのためにも自身の足で登るべきだな〜
」
「 グレートはん、そやったらあんさんも車 使うのやめなはれ。
役者は身体が資本やろ? 鍛えたらええ。
」
「 ふ ふん〜〜 吾輩は大鷲にでも変身して帰るから問題はないな〜〜 」
「 おい 問題をまぜっかえすな 」
「 へ〜い 」
「 大鷲 ッて〜 あ! オレが運ぶぜ! 数人づつまとめて ちゃっと飛べば 」
「 馬鹿か お前は 」
「 ・・・ ったよ ・・・ 」
「 そうよねえ 年配の方や小さな子供は大変かもね 」
「 う〜〜ん ・・・ それじゃ 坂の下でやる?
ってなると公道沿いになるよね 便利だけどホコリっぽいかな 」
「 ええ 衛生面からはちょっとね?
だって お餅ってそこでつくってたべるのでしょ? 」
「 < 搗く > という。 」
「 ・・・わかりました。 やっぱりあんまり車とか通らないところの方が
いいと思うわ。 」
「 なら やっぱウチの門の前、だね。 」
「 場所としては理想的だ。 しかし 客人達をどうするか? 」
「 う〜〜ん ・・・? 」
「 ねえ わたし達が中心で餅つきをするのでしょう?
だったら 場所は商店街の中を借りたらどうかしら。 たとえば ・・・
あのお米屋さんの店先とか ・・・ あそこはちょっと広いでしょ 」
「 う〜ん ・・貸してくれるか? 」
「 いいわ わたしがお願いしてみる。
ヒトが大勢集まれば ついでにお米屋さんで買い物を〜〜って人も
増えるかもしれないし 」
「 そうだね〜〜 その点を押して フラン、 君がにっこり〜〜すれば
たちまちオッケ〜〜さ。 」
「 ピュンマ。 それ ジョーの前では言うなよ? 」
「 わはは ・・・ 」
「 へ〜きへ〜き。 オレ様が後ろで睨み効かせて 」
「 やめろ〜〜 ハナシがややこしくなる。 お前はガキどもの相手をしてろ
ほら あの駄菓子撒き やれ。 」
「 ちぇ。 わ〜〜ったよ 〜〜
」
「 ふふふ ・・・ それじゃ明日さっそくお願いに行くわ。
ついでに あのお店のハチミツ、買ってくるわ。 ものすご〜〜くオイシイの。
この辺りの花の蜜なんですって 」
「 ほう〜〜 そりゃ楽しみだな 」
ぴんぽ〜〜〜ん 玄関チャイムが鳴る。
「 あ♪ ジョーだわ♪ お帰りなさ〜〜〜〜い(^^♪ 」
フランソワーズは玄関に飛んでいってしまった。
「 ・・・ < 見た > のか? 」
「 いいや。 」
「 じゃ なんでわかるんだ? 」
「 愛のチカラ ・・・ 」
「 へ〜〜〜〜〜 」
取り残された?メンバーズは 肩を竦め新聞やら雑誌の陰に身を潜めた。
玄関ではごくごく真面目な会話が交わされている。
「 寒かったでしょう? 晩ご飯、すぐに熱くするわね 」
「 ありがと〜 手 洗ってくるね。 あ ジェロニモ Jr. は? 」
「 まだ帰ってこないわ。 」
「 そっか ・・・ 彼も大変だね 」
「 ええ・・・ 」
「 彼に頼みたいことがあるんだけど ・・・ 」
「 多分 もうすぐ帰ってくると思うけど 」
「 うん そうだね〜 あ 皆は? 」
「 リビングにいるわ? ご飯終わってぼ〜〜〜っとしてるみたいよ 」
「 ぼ〜っとだって?? ひで〜な〜 」
「 お前らに 遠慮してやってるのに ・・・ 」
「 いっつまで玄関でいちゃいちゃしてるのかね? 」
「 寒くね〜んだろ〜 しるかっ 」
「 は。 ジャマものは消える か 」
「 ふん 」
「 そやな ・・・ 」
ぼそぼそボヤキつつ 食後のメンバーズは自室に引き上げていった。
「 さあ ご飯に ・・・ あら? 皆は? 」
リビングでは ピュンマが一人、読み止しの雑誌や新聞を片づけていた。
「 え っと ・・・ あ〜〜〜 冷えるからって 部屋にいったよ 」
「 あら そう? それならヒーターの温度 上げましょうか? 」
「 あ それは〜〜〜 各自に任せればいいんじゃないかな
さて・・・と。 ここも片付いたから じゃあ ・・・
熱い珈琲もらって 僕も 」
ピュンマは キッチン経由で自室に戻っていった。
「 ふうん? 今晩は皆 なにかやることがあるのかしらね? 」
「 皆 忙しいのかもしれないよ 」
「 そうね あ ご飯 ご飯〜〜 」
「 わ〜〜い 今晩はな〜にっかな〜〜 あ? 門が開いたみたい 」
「 まあ ジェロニモ Jr.じゃない? 」
「 そうだね ・・・ ぼく 開けるよ お帰り〜〜 」
ジョーはチャイムが鳴る前に 玄関のドアを開けた。
「 お帰りなさい、ジェロニモ Jr. 」
「 むう? ・・・ ただいま。 遅くなった すまない。 」
「 いいのよ 植木屋さんの手伝い 大変だったでしょう?
ジョーと一緒にすぐ晩御飯にするわね〜 」
「 ありがとう。 手を洗ってくる 」
フランソワ―ズはキッチンに駆けてゆき オトコたちはバスルームに行った。
「 あ〜〜〜 おいし〜〜〜 フラン、煮物、上手になったね 」
「 ふふ ・・ ありがと。 この辺りで採れたお野菜と地域の養鶏場のチキンを
使ってみました。 」
「 ふうん ニンジンってこんなに甘いのか〜〜 」
「 根菜類は 温かい味がするな 」
「 ね! ここは本当にいい土地ね 」
「 うんうん ぼく、この地域、好きさ。ご近所さんも いいヒトたちばっか 」
「 わたしもよ。 ジェロニモ、 植木屋さんの仕事はどう? 」
「 うむ。 奥がふかい。 竹と松をまとめるのは 生け花のようだ 」
「 へえ〜〜 芸術だねぇ 」
「 ああ。 竹や松たちの声を聴いていると 上手くまとまる 」
「 お〜〜 すご〜〜い〜〜〜 」
「 あなたにぴったりの仕事ねえ 」
「 かもしれない。 まだまだ修業が必要と思う。
植木屋は造園家でもあるから 石灯籠や庭石も運ぶよ 」
「 ひええ〜〜〜〜 すげ〜〜〜 さすが ジェロニモ〜〜〜 」
「 ? いしどうろう ってなあに? 」
「 あ〜 石でできた灯籠、えっと庭用の照明台 ってとこかな〜〜
古い神社とかの境内には今でもあるよ 」
「 うむ。 この地域、古くから家、多い。庭に石灯籠 残っている 」
「 へえ〜〜〜 君にしかできない仕事だよ ・・ 」
「 ジョー はどうだ? ボランティア ・・・ 」
「 ぼく? ふふふ 〜〜〜 もうね、 にゃんこに埋もれたり わんこ達と
かけっこしたり〜〜 もう最高さ 」
「 ははは ・・・ その仕事も ジョーにしかできない 」
「 あは そうかも? そうだったらうれしいけど ・・・
あ それでね〜 お願いがあるんだ
」
「 ? 俺にか? 」
「 ウン。 あのさ 忙しい中、悪いんだけど ・・ぼくが行ってる
シェルターにも 門松を飾ってあげたいんだ。 そんなお金ないから〜って
新年の飾りとかしてないし ・・・ あ ぼくが代金払うから 」
「 いらぬ。 オレ、親方に許可もらうから練習としてつくらせてくれ。 」
「 え〜〜〜 いいの? 」
「 俺はまだまだ < 手伝い > だからな。 親方に聞いてみる 」
「 おねがいします。 」
「 俺からも頼みがある。 」
「 ぼくに? 」
「 ああ。 植木屋、庭木やら庭石を置く広い裏庭がある。
なにかと不用心だから 番犬が欲しい、と言っていた・・・
大丈夫、一家は犬好きだ。 」
「 え〜〜 番犬 かあ 」
「 うむ。 家族の一員として迎えてくれるだろう 」
「 あ それなら タナカさんに頼んでみるね。 広い庭があるなら
環境もいいし ・・・ わんこも < 仕事 > があって生き甲斐になるもん 」
「 うむ ・・・ いい犬がいるか 」
「 相談してみる! 一人でも < 家族 > ができるといいなあ〜〜 って
ぼく、思ってるから 」
「 ありがとう、頼む。 ふ〜〜〜 美味かった ・・・ 」
「「 ごちそうさま 」」
「 ふふふ ・・・ たくさん食べてくれてありがとう。
食後のお茶 淹れるわね〜〜 」
「 あ ぼく ホット・麦茶がいいなあ 」
「 はいはい ・・・ 」
「 俺は日本茶がいい。 」
「 はい。 」
「 モチツキ、どうなったか? 」
「 あっち〜〜〜 けど おいし〜〜〜 あ そうだよ〜〜 」
麦茶をふうふう吹きつつ ジョーも気になっていたらしい。
「 ええ あの ね。 ちょっと変更があったの。 」
「 変更? 」
「 そ。 場所をね〜〜 ウチの門の前から 商店街のね、お米屋さんの
前の空き地を使わせてもらおうか〜〜〜って 」
「 へえ? ウチの前じゃダメなのかなあ 」
「 ダメっていうか ・・・ ほら あの坂。 」
「 坂? あ 〜〜〜 そっかあ ・・・・ ちっちゃなコやお年寄りには
ちょっとキツいかあ ・・・ 」
「 俺、皆を運ぶぞ? 」
「 ええ それでもいいんだけど ・・・ ほら子供達にお菓子、配って
みんなで楽しみたいじゃない? だったら坂の下の方がいいねって 」
「 あ〜〜 そうだねえ ・・・ 」
「 うむ ・・・ 米屋の前にはスペースがあるな 」
「 でしょ? 勿論ね〜 実際に餅つきをするのは 私達よ。
アルベルトがこまか〜〜〜く計画してるわ 」
「 あは らしいねえ 」
「 ジョー モチツキのやり方、教えてあげてね 」
「 え〜〜〜 ぼくだって見学してただけだよ?
実際にやったことはないんだ 」
「 え そうなの? 」
「 ウン。 」
「 アイツのことだ。 ネットなどでしっかり検索しているだろう 」
「 でしょうね。 わたしも動画をちろっと見たけど ・・・
なんか こう〜〜 タイミングとか難しそうじゃない ? 」
「 あ〜〜 こうやって キネで搗く合い間にさ < こねる > ヒトが
お餅をひっくり返すんだ 」
ジョーが < エア・餅つき > をやってみせる。
「 え ・・・ 危なくない? 」
「 そこは呼吸を合わせて〜〜ってことみたいだよ? 」
「 ・・・ わたし達でできるかしら
」
「 やってみようよ〜〜 楽しいじゃん?
それにね、 搗きたてのお餅って 超〜〜〜〜 オイシイよぉ〜〜 」
「 まあ そうなの? 焼きたてパンみたいな? 」
「 う〜〜ん ちょっち違うけど まあ 出来立ては最高 ってとこは
共通してるかも〜〜 」
「 ふむ。 俺 ウス やら キネ を運ぶ。
米屋からも門松の注文がきているが ・・・ 俺にはまだまだ任せてもらえない 」
「 お得意さんには 植木屋の親方が造るんだろ 」
「 そうだ。 俺 しっかり見て学ぶ
」
「 すごいなあ 〜 」
「 そうね。 あ ! そうだわ。 そのお米屋さんから頼まれたことがあるの 」
「 お米屋さんから? 」
「 そうなの。 お店とかでね ネズミ除けに猫さんを探しているんですって 」
「 あ〜〜 ・・・ 今の猫さんってさ あんましネズミ 獲らないみたいだよ?
そもそも ネズミってみたことない猫さんも多いみたい 」
「 あ いいのよ、ともかく猫さんがいれば ネズミは寄ってこないからって・・・
本当はね あそこのおばあさまの遊び相手に オトナの猫さんが
いたらなあ〜って ・・・ 」
「 それなら 任せて!! おっとりした猫さん いっぱいいるんだ 」
「 よかった〜〜 猫さんも家族ができればうれしいわよね 」
「 もっちろ〜〜んだよ 〜・・・ ホントはさ ・・・ 出来れば
ウチだって わんこさんやにゃんこさん 飼いたい ・・・・ 」
「 ・・・ジョー それは
」
「 ウン わかってる。 だから せめてわんこさんやにゃんこさんのシアワセに
手を貸せればなあ って思ってる。 」
「 ジョー。 いいことだな 」
「 ウン ・・・ さあ〜〜 歳末はいろいろ忙しいね ! 」
「 うむ。 」
美味しい晩御飯に満腹し 皆 ほっこり・・・ 笑みを交わすのだった。
年の瀬のある日、はたして ― モチツキ大会 は 大盛況となった。
米屋のご主人は喜んで店先の広場を使わせてくれた。
博士が煙草屋のご隠居さんを通じて 町会長さんに声をかけてくれたので
当日は わらわら わらわら ・・・ オトナもコドモたちも集まってきた。
最近は 餅つき など 滅多に見られないからかもしれない。
臼と杵 は ジェロニモ Jr. が軽々と運んでくれた。
もち米がいい具合に炊き上がった。
「 さあ 行くぞ まずは っと 」
「 ほいよ 」
コシコシコシ ・・・ 臼の中のモチゴメを杵で適当に潰す。
「 ほんじゃ そろそろ 」
「 オッケ〜〜 」
「 はっ! 」
アルベルトは気合いを入れて杵を持ち上げた。
― いや 実際は < 軽々 > なのだが ・・・そこはそれ・・・
公衆の面前ゆえ それらしくやらねばならない。
「 えいっ ・・・ 」
「 はっ 」
「 ほいっ 」
「 よっ 」
合の手の < 捏ね役 > は ジェット なのだが ・・・ これが案外、というか
大雑把だがリズム感は抜群の彼には適役だった らしい。
タイミングがぴたり、と合って みるみる餅が搗き上がってゆく。
お〜〜〜 すげ〜〜〜
へ〜〜 ガイジンさんたち、上手だね〜〜
見物からも感嘆の声が聞こえてきた。
ジェットなどは大いに気をよくしている。
「 あは もう搗きあがるね〜〜 次のモチゴメは炊けているかなあ 」
手拭で 姉さん被り をしたピュンマが 忙しそうに行き来している。
「 お兄さん、ちょうど蒸しあがりましたよ 」
米屋の奥さんもにこにこ ・・・ 手伝ってくれている。
「 あ ありがとうございます〜 えっと あっちっち〜〜〜 」
「 ほら 気をつけて ・・・ この鍋掴み、これつかって 」
「 あ〜〜 ありがとうございますぅ〜〜 よ・・・っと〜 」
「 ま〜 みんな若いヒトたちがてきぱき動いて・・・ 気持ちいいわねえ〜
ねえ みいちゃん? 」
奥さんは足元でスリスリ〜〜してる三毛猫を抱き上げた。
「 あんたが来てくれて本当に嬉しいよ ・・・ ウチのおばあちゃんも
喜んでいるし〜〜 ネズミどもの姿も見なくなったし ね 」
みゃああ〜〜〜ん ・・・ ふっくらした三毛猫が腕の中でごろごろ咽喉を鳴らしていた。
「 わあ〜〜い すご〜〜い 」
「 おいしそう〜〜〜 いいにおい〜〜〜 」
搗き上がった餅を前に コドモたちは大騒ぎ ・・・
「 はいはい ちょっとお待ち 」
商店街のお母さんたちが 餅を小さく丸めてくれた。
「 ほ〜ら どうぞ 食べてね 」
フランソワーズがにこにこ ・・・ 地域の人々に配る。
「 おう これ・・・ もってゆけよ〜〜 ちょいと早いが おとしだま だあ〜 」
のっぽの赤毛が チビっこ達に駄菓子を配る。
「 わあ〜〜 ぶらっく・さんだ〜 だあ〜 いいのぉ 」
「 あ! これ オレ すき〜〜 うまかぼ〜〜 」
チビ達がわいわいむらがってくる。
「 おう いいぞ〜 そのかわり 母ちゃんの手伝いとかちゃんとやれよ 」
「 やってる! 買い物のふくろ もってる 」
「 アタシも〜〜 お皿ふき やってる〜〜〜 」
「 そっか〜 みんないいコだなあ ほら そっちのも もってけ〜〜 」
「 うわい〜〜〜 」
ジェットは駄菓子を大きな箱に入れて チビっこ達に自由に取りださせてた。
「 あら 撒くんじゃなかったの? 」
「 あ? あ〜〜 なんかさ < 拾う > って イヤじゃん?
こうやって好きに取ってもらうほうが どっちも気分いいじゃんか 」
「 へえ・・・ お前も案外気が回るんだな 」
「 んだよ〜〜〜 俺さまはない〜ぶなんだぜ 」
「 お前がナイーブ? ナイーブが泣くぜ
」
「 ! てめ〜〜〜 」
思わずカッとなりかけた が ―
「 ほい モチゴメ 蒸けたよう〜〜 」
ピュンマが 熱々のモチゴメを運んできた。
「 お。 次のを搗くぞぉ〜 」
「 ふ ふん 知ったこっちゃね〜 」
「 おら〜〜 行くぞ 」
「 わあ〜〜 つぎの餅つきだあ〜〜 よいしょ〜 」
「 すげ〜〜 よいしょ よいしょ〜〜 」
集まったチビっこ達は 目をキラキラ〜〜 掛け声を上げ始めた。
「 ・・・ ち ちぇ〜〜 」
ヘソを曲げかけていた赤毛も 仕方なく < 捏ね役 > を始めた。
「 えいっ 」
「 ほい 」
「 それっ 」
「 はっ 」
息はぴたり、たちまち餅が搗きあがってゆく。
「 ・・・ よかったわ またケンカなんかになったら・・・わたし 」
「 フラン、大丈夫さ。 あの二人のは痴話喧嘩に近いよ 」
「 ち 痴話けんか?? 」
「 そ。 仲がいいほどケンカする〜ってヤツさ。
あれ? ところで ジョーは? 」
「 ああ 今日もね ボランティア。 手が足りなくて忙しい〜〜って。 」
「 犬猫のシェルターだったっけ? あは ジョーにぴったりだね 」
「 そうみたい。 ほら ここのお米屋さんの三毛猫さん、 彼女も
ジョーがシェルターから紹介したのよ。 」
「 へえ〜〜 ここのヒト達、なんかものすごく可愛がってるよ? 」
「 ええ よかったわ ・・・ 本当ならウチでも引き取りたいだけど 」
「 それは ちょっと無理かもなあ ・・・
僕らはいつ < 消える > か わからないから 」
「 そう ね ・・・ 」
フランソワーズは ぽつん、と言葉を切って俯いてしまった。
「 ウチの門松、 作る 」
ジェロニモ Jr.の大きな手が 彼女の肩に乗せられた。
「 え? 植木屋さんのお手伝いは終わったの? 」
「 大方 終わった。 親方、余った材料をくれた。
これでまずジョーのシェルター に門松、つくる。
そのあと ― ここの商店街にも飾る 」
「 わあ〜〜〜 いいねえ〜〜 」
「 ウチの門松、最後になるが いいか 」
「 勿論よ〜 あ ジェロニモもお餅、食べて! ものすごく美味しいわ 」
「 ああ いただこう 」
「 ね〜〜 搗きたてのお餅は最高だろ 」
ジョーはなんだか得意満面な気分になっていた。
その日のうちに 商店街には小型の門松がずら〜〜〜っと並んだ。
「 お〜〜〜 なんか景気がいいねえ 」
「 うんうん やっぱ門松があるといいね 」
「 これ・・・ あの岬の家のガイジンさんが作ったんだって! 」
「 ああ 知ってる! 植木屋の親方 大満足だってよ 」
「 ・・・ いい隣人だな 」
「 うん うん 」
オトナ達は ほっこり笑みを交わし
「 わあ〜〜 お正月だあ〜〜〜 」
子供たちは はしゃいで駆けまわっていた。
― そして 元旦。
サイボーグたちは全員で岬に集まっていた。
「 ・・・ 結構冷えるなあ 」
グレートはぐるぐる巻きにしたカシミヤのマフラーに頤を埋めている。
「 あんさん、寒がりやな〜〜 」
金襴の中国服で 張大人が笑う。
「 アンタほど皮下脂肪がないのさ! 」
「 最低気温は日の出前にでる。 」
革のコートでアルベルトが呟く。
「 あ ほら! そろそろだよ〜〜〜 」
全員が ピュンマが指した東の海上に目を凝らす。
サ −−−− ・・・・・
濃い紺色の水面に 金色の筋が広がり始めた。
ほう 〜〜〜 ああ 〜〜〜
「 ステキ ・・・ 」
「 う ん ・・・ ( ふぁ〜〜〜 ) 」
フランソワーズの隣で ジョーが思わず大欠伸。
「 眠そうね 大丈夫? 」
「 あ ごめん ・・・・ 具合の悪い猫さんがいてさ 徹夜で看病してて 」
「 いいのよ。 看病、お疲れさま。 その猫さんは ・・・ 」
「 うん なんとか持ち直した ・・・ 」
「 そう ・・・ よかった。 新年を迎えられたのね 」
「 うん。 はやく元気になってほしいな 」
「 そうね 」
「 なんか お正月の準備 手伝えなくてごめん 」
「 いいの。 皆がこうして笑顔で集まっていられれば ― それが イチバンよ。 」
「 うん ・・・ 」
きゅ。 ジョーとフランソワーズは しっかりと手を握りあった。
ゆっくりと太陽が姿を見せてきた ― 新しい年が 明ける。
******************************* Fin.
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Last updated : 01,02,2018.
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*************** ひと言 *************
あは ・・・ 年越しで やっと終わったです ・・・
原作・あのお話 の 続編? こんな風に
平和に楽しく年末年始を過ごしてほしいなあ ・・・・
シェルターのハナシは 本当ですよ〜